
円仁会株式会社の上村です。
介護施設を経営するうえで、「利益をどこから生み出すのか」という考え方は、その後の経営を大きく左右します。
私はこれまで一貫して、中小零細企業がつくる介護施設は、入居費用で利益を残すモデルを目指してはいけないと考えてきました。
その理由は、介護施設は単なる不動産事業ではなく、地域で安心して暮らし続けるための住まいだからです。
最初に決めたのは「年金で入居できる価格」
私が19床の小さな介護施設を建設したとき、最初に決めたのは建物の仕様でも収支計画でもありませんでした。
まず決めたのは、入居費用です。
「年金の範囲で安心して入居できる施設にしたい。」
それが、私の原点でした。
そのため、食事付きで月額10万円程度という価格を目標に設計を進めました。
もちろん、利益だけを考えるのであれば、入居費用をもっと高く設定することもできます。
しかし、それでは本当に支援を必要としている方が利用できなくなってしまいます。
介護施設は、誰もが安心して暮らせる住まいであるべきです。
年金生活の方はもちろん、生活保護を利用されている方も安心して入居できる環境を整えることに、大きな社会的な価値があると考えています。
利益は入居費ではなく事業全体で生み出す
だからこそ私は、利益は入居費から生み出すものではなく、事業全体で生み出すものという考え方で施設を設計しました。
その中心となるのが、「併設(事業連携)」という発想です。
例えば、
- 訪問介護
- 訪問看護
- 居宅介護支援事業所(ケアマネジャー事務所)
これらを介護施設と組み合わせることで、一人の利用者を切れ目なく支える地域包括ケアの仕組みを構築できます。
利用者にとっては安心して暮らし続けられる環境が整い、事業者にとっても複数のサービスが連携することで安定した経営基盤を築くことができます。
介護施設単体で利益を出そうと考えるのではなく、地域に必要なサービス全体を設計することが重要なのです。
売上8,000万円と1億2,000万円では経営の景色が変わる
19床程度の介護施設では、「年間売上は8,000万円ほど」と言われることがあります。
一方で、私たちにとっては、介護施設単体で年間売上約1億2,000万円が当たり前です。
この4,000万円の差は、介護事業において決して小さな差ではありません。
この差があるからこそ、
- 職員の給与を引き上げられる
- 人材育成へ十分に投資できる
- サービス品質を高められる
- 将来の設備更新に備えられる
- 新たな事業展開にも挑戦できる
といった好循環が生まれます。
経営者が目指すべきなのは、単に施設を満床にすることではありません。
事業全体で安定した利益を生み出し、その利益を職員や利用者へ還元できる仕組みをつくることです。
年間1億5,000万円の経営を実現する設計
私が設計したのは、介護施設単体で完結する経営ではありません。
介護施設単体で年間約1億2,000万円を実現し、さらに訪問介護、訪問看護、居宅介護支援事業所を組み合わせることで、事業全体として年間1億5,000万円規模の売上を生み出せるモデルを構築しました。
その内訳は、介護施設で年間約1億2,000万円、さらに訪問看護を併設(事業連携)することで年間約3,000万円の売上を積み上げるイメージです。
そうすることで、入居費用を上げる必要がありません。
年金の範囲で暮らせる価格を維持しながら、生活保護を利用されている方も含め、本当に支援が必要な方を受け入れ続けることができます。
そして十分な利益があるからこそ、職員への還元も実現できます。
私たちが目指す経営では、職員の平均年収500万〜600万円以上を実現し、さらに1部屋あたり月間売上60万円超という収益モデルを構築しています。
重要なのは、入居費用を上げることではなく、事業設計によって収益性を高めることなのです。
介護施設経営とは地域の仕組みを設計する仕事
介護施設経営とは、建物を運営することではありません。
地域に必要なサービスを組み合わせ、一人ひとりが安心して暮らし続けられる仕組みを設計することです。
入居費用を抑えながらも、職員へ十分な待遇を提供し、サービス品質を高め、持続可能な経営を実現する。
そのためには、施設単体の収支だけを見るのではなく、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援まで含めた事業全体を設計するという視点が欠かせません。 私は、この考え方こそが、中小零細企業がこれからの介護施設経営で持続的に成長していくための、一つの答えだと考えています。

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