補助金3600万円。それでも“看多機”をやらない方がいい人とは?
元インキュベクス代表取締役(現:円仁会代表)の上村(かみむら)さんにお話しいただいております。
こんにちは、円仁会の上村です。
本日は「看護小規模多機能型居宅介護」、通称「看多機(かんたき)」についてお話しします。
この「看多機」という事業形態、補助金が手厚いこともあり注目されていますが、僕自身は慎重な立場です。
実際にさまざまなケースを見てきた中で、看多機が向いている法人とそうでない法人には明確な違いがあると感じています。
こちらの動画はYouTubeでも配信しておりますので是非ご覧ください。
看多機の仕組みとは?
看多機は、「通い」「泊まり」「訪問看護」「訪問介護」「ケアマネジメント」といった機能を一体的に提供するサービスです。
ざっくり言えば、以下のような構成です。
- 通い(デイサービス):日中のケアを提供
- 泊まり(ショートステイ):夜間・短期の宿泊対応
- 訪問看護:医療的ケアを提供
- 訪問介護:日常生活のサポート
- ケアマネジメント:ケアプランの作成と管理
つまり、1つの事業所でこれらの事業を同時に展開するという非常に複合的なモデルです。
看多機でうまくいっている法人の特徴
うまくいっているところは確かに存在します。
ただし、共通して言えるのは、「すでに必要な機能と人員を持っていた」という点で、介護度や医療依存度が上がった際の受け皿(特養などの施設)が整備されている事業者の看護小規模多機能。
人員的には、
- 医療法人で看護師が常駐している
- 社会福祉法人で訪問介護・看護の基盤がある
- 大手事業者でケアマネジメント機能も整っている
このように、既存のリソースに「プラスα」で看多機を組み込むスタイルであれば、成功しているケースが多い印象です。
看多機の落とし穴:補助金の罠
看多機は開業時にかなり大きな補助金が出ることがあります。
たとえば横浜市では、3600~3700万円の初期補助金が支給された年もありました。
でも、ここには注意が必要です。
補助金は「事業を軌道に乗せるための支援」であって、「継続性を保証するもの」ではありません。
開業後に必要な人件費やシフト体制を見誤ると、すぐに赤字転落…というケースもよくあるのです。
補助金などについての資料(横浜市ホームページより) http://tiny.cc/7x2j001
実際の現場では何が起きているのか?
僕がこれまで関わった訪問看護ステーションは1000か所以上。
その中で看多機に挑戦したのは4〜5事例ですが、そのほとんどが苦戦していました。
何が難しいのか?
現場では、以下のようなことが実際に起きています。
- 看護師が介護業務もこなさなければならない
- 介護士が看護師の補助まで手が回る
- 送迎業務までスタッフが兼任
- シフトが組みにくく、退職者が出やすい
- サービス提供の幅が広すぎて管理が複雑
「何でも屋さん状態」のスタッフが疲弊し、人材定着の難易度が格段に上がります。
これをうまくコントロールできないと、補助金の恩恵は一瞬で消えてしまいます。
僕が選んだのは「住宅型有料老人ホーム」
僕自身は、看多機ではなく「住宅型有料老人ホーム」の運営を選びました。
この業態には補助金こそありませんが、自由度が高く、経営設計がしやすいという大きなメリットがあります。
自由度の違い
看多機では、例えば日中は「3人の利用者に対して看護師1名以上」など、配置基準が厳格です。
また、夜勤も看護師が必要になる場合があり、人的コストが非常に高くなります。
一方、住宅型であれば、
- 訪問看護ステーションと連携することで医療対応が可能
- 訪問介護と組み合わせることで柔軟なケアが可能
- スタッフの配置に一定の自由があるため、コスト管理もしやすい
といった特徴があります。
実際に僕の施設では、介護士のリーダー格で年収600万円以上、
看護師の平均年収は650万円程度を支払いながら、しっかりと利益が出せています。
制度の魅力と現実のギャップを見極める
補助金に釣られて始めたものの、事業としては厳しい状況に陥ってしまう。
そんな看多機の事例を、僕は何度も見てきました。
大切なのは、「最初の一歩」として何を選ぶか。
これから箱物(施設系)の介護事業を始めようと考えている方には、
まずは住宅型有料老人ホームから始めることをおすすめします。
そして、人材・機能・運営体制が整った段階で、看多機にチャレンジするのは”あり”だと思います。
補助金は魅力的なスタート資金ではありますが、
「長く安定して続けていけるかどうか」は、自分たちの経営力次第です。
ぜひ、一時的な数字や制度に惑わされず、現場と経営の実情を見据えて選択してください。
最後に・・・円仁会とは?
円仁会は、インキュベクスやケイスラッシュ、医療関係施設など、複数の関連会社を統括するホールディングカンパニーです。今年 1月より私は円仁会の代表取締役に就任し、よりスムーズな運営を目指して、各関連事業所の代表職を信頼できる方々に委ねております。
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