円仁会株式会社の長谷川です。

第2章 では、どうすれば「違法になり得る状態」を避けられるのか?

第1章では、サ高住の重要事項説明書に「排泄介助」と記載されている場合、それだけで違法になるわけではないことを確認しました。

問題になるのは、その排泄介助が、住宅サービスなのか。

それとも、介護保険の訪問介護サービスなのか。

そして、契約・現場でのサービス提供・介護保険請求までが、その区分に沿って一致しているのかという点です。

では、サ高住を運営する経営者は、具体的に何を確認すればよいのでしょうか。

難しく考える必要はありません。

まずは、自社の書類と現場の実態を、次の4つに分けて確認してみてください。

① 重要事項説明書

最初に確認したいのが、サ高住の重要事項説明書です。

排泄介助について、誰が提供するサービスとして記載されていますか?

「サ高住事業者が提供する」

となっているのでしょうか。

それとも、外部の介護保険サービスとして整理されているのでしょうか。

まずは、ここを確認します。

サ高住の重要事項説明書には、入浴、排せつ、食事等の介護サービスについて記載する項目があります。

そのため、「排泄介助」と書かれていること自体が問題なのではありません。

大切なのは、その排泄介助を、どの事業者の、どのサービスとして位置付けているのかです。

さらに確認したいのは、現在の実際の運用と重要事項説明書の内容が一致しているかどうかです。

開設当初に作成した重要事項説明書と、現在のサービス提供体制が変わっているケースもあります。
「昔作った書類だから」とそのままにせず、現在の運用と照らし合わせることが重要です。

② 契約書・料金表

次に確認したいのが、契約書と料金表です。

排泄介助について、サ高住側が料金を設定していませんか?

もし住宅側のサービスとして料金を設定しているのであれば、その内容と実際のサービス提供が一致しているかを確認する必要があります。

例えば、契約書や料金表には「排泄介助」が住宅サービスとして記載されている。

ところが、実際には訪問介護事業所の職員がその排泄介助を行い、介護保険サービスとして請求している。
このような状態になっていないでしょうか。

料金設定を見るだけではなく、

「この料金は、何に対して支払われているのか」

まで確認することが大切です。

住宅サービスとして料金を受け取っているものと、介護保険サービスとして提供・請求しているものが重なっていないか。

サ高住経営では、この点を曖昧にしないことが重要になります。

③ 実際のサービス提供

三つ目は、実際のサービス提供です。

実際に排泄介助を行っているのは誰でしょうか?

サ高住の職員でしょうか。
それとも、訪問介護事業所の職員でしょうか。

ここは、書類を見るだけでは分かりません。

実際に現場で誰が何をしているのかを確認する必要があります。

さらに重要なのは、「排泄介助」という一言で済ませず、具体的に何をしているのかを確認することです。

例えば、

  • トイレまでの誘導や見守りなのか。
  • 衣類の上げ下げなのか。
  • 排泄後の清拭やおむつ交換まで行っているのか。

「排泄介助」という一つの言葉の中にも、実際にはさまざまな行為が含まれます。

だからこそ、契約上のサービス内容と、現場で行っている内容を具体的に照らし合わせる必要があります。

重要事項説明書には一言「排泄介助」と書いてあっても、現場では具体的にどのような介助を行っているのか。

誰が、いつ、どのような形で提供しているのか。

ここまで確認して初めて、書類と現場が一致しているかが見えてきます。

④ 介護保険の請求

最後に確認したいのが、介護保険の請求です。

そのサービスについて、訪問介護として介護保険請求をしていないかを確認します。

ここまで確認して初めて、

「契約上は住宅サービス」

「実際には訪問介護」

「請求も介護保険」

という状態になっていないかが見えてきます。

サ高住運営者が避けるべきなのは、住宅サービスと介護保険サービスの境界が曖昧な状態です。

そのためには、

住宅サービスとして提供するもの と 介護保険サービスとして提供するもの
を明確に分けることが基本になります。

「書類」「現場」「請求」を一つにつなげて確認する

ここまで4つのポイントを見てきました。

しかし、重要なのは、それぞれを別々に確認して終わりにしないことです。

重要事項説明書、契約書、料金表、ケアプラン、訪問介護計画、サービス提供記録、介護報酬請求。

これらを一つずつ確認し、

「書いてあること」

「実際にやっていること」

「請求していること」

が一致しているかを確認してください。

例えば、
重要事項説明書では住宅サービスとして説明されている。
契約書にも住宅側のサービスとして記載されている。
しかし、実際には訪問介護事業所がサービスを提供し、介護保険として請求している。

このような状態であれば、改めてサービスの区分を確認する必要があります。

特に、住宅事業と訪問介護事業を同一法人で運営している場合には、より慎重な確認が必要です。

「いつもこのやり方」が判断基準になってはいけない

サ高住の運営では、

「いつもこのやり方でやっている」

「国のひな形に書いてある」

「同じ法人だから問題ない」

という考え方になってしまうことがあります。

しかし、これらの理由だけでは、サービスの区分が明確になっているとは限りません。

同じ法人だからこそ、住宅事業と介護保険事業の境界を意識する必要があります。

現場で当たり前になっている運用ほど、一度立ち止まって確認してみることが大切です。

もし判断に迷う場合には、自治体のサ高住担当部署や、介護保険の指定権者などに、自社の契約内容と実際の運用を示したうえで確認することも重要です。

経営者として大切なのは、「大丈夫だろう」と自己判断することではありません。

分からない部分があるのであれば、確認する。

そして、その確認結果をもとに、必要であれば契約書や重要事項説明書、サービス提供体制などを見直す。

この姿勢が、サ高住を長く運営していくうえで重要になります。

サ高住経営者が、今一度確認しておきたいこと

今回お伝えしたいのは、

「サ高住で排泄介助をしてはいけない」

ということではありません。

問題は、

「その排泄介助は、誰が提供すべきサービスなのか?」

ということです。

住宅サービスなのか。
介護保険サービスなのか。
そして、
その契約・提供・記録・請求が一致しているのか。

ここを確認することが重要です。

サ高住を運営しているのであれば、一度、自社の重要事項説明書を開いてみてください。

そこに「排泄介助」と書かれているなら、

「この排泄介助を、実際には誰が提供し、誰のサービスとして料金を受け取り、介護保険では何を請求しているのか」

を確認してみることをお勧めします。

「重要事項説明書に書いてあるから大丈夫」ではありません。

契約・現場・記録・請求まで確認する。

それが、サ高住運営におけるサービスの境界線を守る第一歩です。

契約書や重要事項説明書は、施設運営上で提供するサービスの約束事でもあります。

だからこそ、一度作成したら終わりではありません。

現在の現場の運用と照らし合わせて、今のサービス提供の実態に合っているのかを確認することが大切です。

この機会に、自社の重要事項説明書と実際のサービス提供、そして介護保険請求を、一度並べて確認してみてはいかがでしょうか。

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