
円仁会株式会社の長谷川です。
第1章 「重要事項説明書に書いてあるから大丈夫」なのか?
今回から、サ高住の運営で見落とされやすい「住宅サービスと介護保険サービスの境界」について、具体的な事例を取り上げながら考えていきます。
サ高住を運営していると、重要事項説明書の中に、
「入浴、排せつ、食事等の介護サービス」という項目があります。
その中には、
「排泄介助」をサ高住の事業者自身が提供するサービスとして記載しているケースがあります。
ここで、サ高住を運営する皆さんに、一度考えていただきたいことがあります。
その排泄介助は、いったい「誰が提供しているサービス」なのでしょうか。
サ高住には、安否確認や生活相談など、住宅に付帯する基本的なサービスがあります。
一方で、入居者が介護を必要とする場合には、訪問介護などの介護保険サービスを外部の事業所から利用することもできます。
つまり、住宅事業者が提供するサービスなのか。
それとも、介護保険の訪問介護として提供するサービスなのか。
この区分を明確にしておく必要があります。
ここで誤解してはいけないのは、
「サ高住で排泄介助を行うことが違法」という話ではないということです。
問題になるのは、重要事項説明書や契約書では「サ高住側が排泄介助を提供する」となっているのに、実際には訪問介護事業所が同じ排泄介助を行い、その内容を介護保険サービスとして請求しているようなケースです。
例えば、
重要事項説明書に「排泄介助」と記載され、住宅側がそのサービスを提供することになっている。
さらに、その排泄介助について住宅側の料金設定もある。
ところが、実際の排泄介助は訪問介護事業所が行い、その内容について介護保険の訪問介護費を請求している。
このような場合には、
「住宅サービスとして契約しているサービス」と
「介護保険サービスとして請求しているサービス」
が同じものになっていないかを確認する必要があります。
ここが今回の問題の核心です。
国のサ高住の登録事項には、実際に「入浴、排せつ、食事等の介護サービスの内容」という項目があります。
したがって、
「重要事項説明書に排泄介助と書いてある=違法」ではありません。
しかし、国のひな形に記載できることと、そのサービスを介護保険で請求してよいことは別の問題です。
サ高住の運営では、「住宅に付帯するサービス」と「外部の介護保険サービス」を明確に区分する必要があります。
だからこそ、
「国のひな形に書いてあるから大丈夫」
と考えるのではなく、自社の重要事項説明書、契約、実際のサービス提供、そして介護保険請求までを一度確認する必要があります。
特に注意したいのが、サ高住と訪問介護事業所が同一法人、あるいは関連法人であるケースです。
同じ法人の中で住宅事業と介護事業を運営していると、現場では、
「同じ入居者に必要な介助をしているだけ」という感覚になりやすくなります。
しかし、事業者が同じであっても、住宅サービスと介護保険サービスは同じものではありません。
「誰が行ったか」だけではなく、
誰のサービスとして契約され、
何の対価として料金を受け取り、
介護保険では何を請求しているのか。
ここまで確認することが重要なのです。
サ高住経営で見落とされやすい「サービスの線引き」
サ高住と訪問介護を同一法人で運営している場合、住宅サービスと介護保険サービスの線引きは、特に意識しておく必要があります。
例えば、同じ職員が同じ入居者に対して、毎日のように介助を行っているとします。
現場の感覚としては、
「この方に必要な介助をしている」
という一つの仕事に見えるかもしれません。
しかし、経営上は、それだけでは整理できません。
- その介助がどの事業のサービスなのか。
- どの契約に基づいているのか。
- 料金はどこから受け取っているのか。
- そして介護保険では、どのサービスとして請求しているのか。
これらを整理しておく必要があります。
特に、重要事項説明書や契約書を作成した時期と、現在のサービス提供体制が変わっている場合には注意が必要です。
開設当初は住宅側のサービスとして整理していたものが、いつの間にか訪問介護事業所のサービスとして提供されている。
あるいは、その逆も考えられます。
こうしたズレは、日々の運営の中では見えにくいものです。
経営者が一度確認したい4つのポイント
では、サ高住を経営するうえで、何を確認すればよいのでしょうか。
まず確認したいのが、重要事項説明書と契約書です。
「排泄介助」「入浴介助」「食事介助」などの記載がある場合、それがどの事業者のどのサービスとして位置付けられているのかを確認します。
次に、
実際のサービス提供体制です。
書類上は住宅サービスとなっていても、現場では訪問介護事業所の職員が介護保険サービスとして提供しているかもしれません。
逆に、介護保険サービスとして整理しているつもりでも、実際の現場では住宅側のスタッフが行っているケースも考えられます。
三つ目は、
入居者から受け取っている料金です。
何に対する料金なのか。
どのサービスの対価なのか。
この部分を曖昧にしないことが重要です。
そして四つ目が、
介護保険の請求内容です。
現場で行ったサービスと、介護報酬として請求している内容が一致しているのか。
住宅側で提供しているサービスと、介護保険で請求しているサービスが重複していないか。
ここまで確認する必要があります。
「書類」「現場」「請求」の3つをつなげて見る
サ高住の運営で怖いのは、書類だけを確認して安心してしまうことです。
重要事項説明書が整っている。
契約書も整っている。
だから大丈夫。
本当にそうでしょうか。
経営者が見るべきなのは、
- 書類
- 現場
- 請求
の3つです。
この3つが同じ考え方で整理されているかを確認してください。
重要事項説明書では住宅サービス。
現場では訪問介護。
請求では介護保険。
このように、それぞれの説明が食い違っていれば、制度上の整理を改めて確認する必要があります。
特にサ高住と訪問介護を同一法人で運営している場合には、この確認を定期的に行うことが重要です。
「昔からそうしている」が一番危ない
介護事業の経営では、長年続いている運用ほど見直されにくいものです。
開設当初に作った重要事項説明書。
何年も前に決めた料金設定。
以前から続いているサービス提供方法。
そして、毎月繰り返されている介護保険請求。
一つひとつを見ると問題がないように感じても、時間の経過によって、書類と現場の運用にズレが生じることがあります。
事業規模が大きくなれば、そのズレも小さな問題では済まなくなる可能性があります。
だからこそ、サ高住を経営するのであれば、
「今まで問題がなかったか」
ではなく、
「今の運用を、契約・サービス提供・介護保険請求まで一貫して説明できるか」
という視点で確認することが大切です。
次回は「そのサービス、本当に介護保険で請求できますか?」
今回取り上げたのは、サ高住の重要事項説明書に記載される「排泄介助」と、実際のサービス提供や介護保険請求との関係です。
サ高住では、住宅サービスと介護保険サービスが近い距離にあるからこそ、その境界が曖昧になりやすくなります。
「重要事項説明書に書いてあるから大丈夫」
「同じ法人だから問題ない」
という考え方だけでは、十分とはいえません。
次回はさらに踏み込んで、サ高住で提供している介護サービスを、どこまで介護保険サービスとして整理できるのかという点について考えていきます。
サ高住の経営では、売上や稼働率だけを見るのではなく、制度に沿ったサービス設計と運用管理まで含めて事業を管理することが重要です。
その積み重ねが、長く経営を続けるための土台になります。

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